「制服としてのカバーオール」

袖を通せば、季節が変わる。
「スウェットは、かつて“高級品”だった。」
cantáteが教えてくれたベルトの答え。
スタイリングでわかる、“WOOL LINEN UTILITY JACKET”の正体。
「制服としてのカバーオール」
こんばんは。cantáte 松島です。
カバーオールって、どんなイメージですか?
多くの人は「労働者の制服」と答えるはずです。
ただ制服と聞くと、同時に「ピリッとした清潔感」や「きちんと感」も連想しませんか?
今回のカバーオールは、その“制服らしさ”を軸に据えて仕立てました。
<cantáte>
COLOR: INDIGO
SIZE: 44,46,48
¥77,000- TAX IN
縫製をお願いしたのは、cantáteのシャツを任せているシャツ工場。
「制服はパリッとしていてほしい」──その思いから、シャツと同じ工場でカバーオールを縫うことにしました。
ここのシャツ屋さんは、とても神経質。
前にも話しましたが、ぼくはここ以外ではシャツを作りたくないくらい、世の中には“汚い縫製”のシャツが多いんです。
工場を訪れると、一本の縫い目にどれだけ集中しているかに圧倒されます。
スピードより正確さを優先し、針目一つひとつに意識を込める。
その張り詰めた空気が、そのまま洋服の端正さに表れるのだと思います。
一方で、共生地のペインターパンツは、逆に“イレギュラー”であってほしい。
普通なら同じ生地なら同じ工場で縫うところを、あえて分けています。
パッと見は同じに見えても、内側を覗いたときに違いが見える。
そのコントラストを楽しんでもらいたくて、仕掛けた構成です。
ディテールも端正です。
・糸渡しを効かせたダブルステッチ
・Gジャンと同じように脇下の縫い代はずらし、縫い代が刺さらず快適
・大きなパッチポケットは、秋場に手ぶらで外出するのにちょうどいい
そして、ボタンは月桂樹。
第二次世界大戦期、物資統制の時代に生まれた汎用品です。
ロゴ入りではなく、どこにでもあった、いわゆるレギュラー品。
ブランド品なのに、ロゴ入りじゃなくて汎用品を“あえて”付けなきゃいけなかった。
レギュラーボタンなのに、ついていることが逆にイレギュラー。
そこに妙な色気を感じてしまうのです。
素材は10オンスのライトオンス・セルヴィッチデニム。
経糸にはインディゴ、緯糸にはグレーを使っています。
本来なら緯糸はオフ白が一般的。けれど、今回はくすんだ色合いを選びました。
理由は単純で、ヴィンテージのカバーオールやペインターの格好が良い個体は、緯糸がグレーのものが多いから。
どうしてそうなのか、はっきりした理由はわかりません。
けれど、グレーだから雰囲気が締まって見える。そういう服に説得力があるのは間違いありません。
着込むほどに浮かび上がるアタリや色落ちは、ヘビーオンスのデニムとはまた違う表情。
軽やかで上品、それでいて奥行きのある風合いに育っていきます。



WWⅡ Coverall Jacket (183cm Size: 48)
セットアップでも、単品でも。
「制服としてのセットアップ」は、着心地も楽で、気づけば毎日のように袖を通しているはずです。
ちょっとそこまでの買い物、休日の散歩、仕事終わりに寄り道するとき。
気がつけばこれを羽織っている──そんな存在になっていくと思います。
軽やかなデニムに、重みある背景。
第二次世界大戦中、物資統制の時代に生まれた合理的で簡素なワークウェア。
その意匠をヒントにしながら、今の街で着られる一着として再構築しました。
カバーオールは、もともと労働着でした。
それがいまは制服のように、日々のワードローブに自然と組み込まれていく。
学生の頃の自分にこのカバーオールを見せても、きっと「ただの作業着じゃん」と言ったでしょう。
でも今はわかる。端正に仕立てられた“ただの作業着”ほど、毎日の制服になっていく。
飾り気がないからこそ、毎日の自分に一番馴染む。
cantáte 松島 紳