装飾のない説得力。
季節はまたぐ。
“LABYRINTHE” — CLASS 26SS
501の話が、なぜ噛み合わないのか?
より確かなものへ —— i’m here 26SS
こんにちは。
clichéの石橋です。
今シーズンより、clichéに新たなブランドが加わります。
nonnotte(ノノット)。
静かで、強い。
余計な装飾を削ぎ落としながらも、どこか余韻が残る。
一見すると穏やか。
でも袖を通すと、設計の意志がはっきりと伝わってくる。
そんな洋服をつくるブランドです。




決して派手なわけではない。
大きなロゴもなければ、ひと目で“それ”とわかる装飾もない。
それでも、確かな軸があって、不思議と視線が止まる。
静かなのに、なぜか強い。
展示会で最初に目にしたのは、
モノトーンを基調とした、一見とてもシンプルな洋服たちでした。
派手さはない。
でも、なぜか胸の奥がざわつく。
その感覚の正体がわからないまま、ただワクワクしていたのを覚えています。
そして、デザイナー・杉原さんの言葉を聞きながら袖を通したとき、
その理由が少しずつ腑に落ちていきました。
パターンの取り方。
素材の選び方。
見えない部分の設計。
直感で「いい」と感じたものに、
ちゃんとした裏付けがある。
不思議と目を引く面構え。
袖を通した瞬間の高揚感。
その両方を成立させているのは、
服の奥にある思想と、つくり手の熱量だと思います。
ここまで深みを持ちながら、
あくまで静かに佇んでいるブランドは、そう多くない。
nonnotteは、そういう存在です。


nonnotteの服作りは、素材からはじまります。
「この瞬間、いちばん着たい。」
そんな衝動を自然に引き出す服を目指して、
デザイナー自ら産地へ足を運び、職人と向き合いながら素材を一から組み立てていく。
既にある生地を選ぶのではなく、
どんな空気を纏わせたいのか、どんな温度で着てほしいのか。
その感覚から逆算して、生地をつくる。
糸の番手や撚り。
織りの密度。
仕上げの加工。
数字や工程の積み重ねは地道ですが、
その積層が、袖を通した瞬間の“理由のある高揚感”につながっている。
そして、そうして生まれた特別な素材には、
それぞれきちんと名前が与えられています。
ただの生地ではなく、
思想と背景を持った存在として扱われている証。
素材に名前があるということは、
その服に、はじまりの物語があるということだと思います。

“Lineon(リネヨン)”
レーヨンとリネンを強撚した糸を用い、
それを超高密度で織り上げた特別なファブリック。
高密度素材に天然繊維を掛け合わせる場合、
一般的にはシルクが選ばれることが多い。
繊維が細く、強く、整っているからこそ、
緻密な織りに耐えられる。
けれど真夏になると、どうしてもわずかな湿度を抱え込む感触が残る。
リネンは、その真逆に近い。
糸は切れやすく、強撚すればなおさら扱いは難しい。
それをレーヨンと混ぜ、さらに高密度で織る。
工程としては、決して効率的とは言えません。
むしろ、遠回りに近い。
それでも、この組み合わせでしか生まれないものがある。
触れた瞬間に感じる清涼感。
乾いた空気をまとったようなシャリ感。
そして、見た目の繊細さとは裏腹のタフさ。
試行錯誤を重ねて辿り着いたのが、この質感です。
黒は、ただ黒いだけではありません。
深みのある色の奥に、
シルクにも似た静かな艶が宿る。
光の当たり方によって、素材そのものが持つ陰影が浮かび上がり、
歩くたびにドレープが揺れる。
一見ミニマル。
でも、近づくほどに表情が増していく。
“Lineon”という名前が与えられているのは、
この質感が偶然ではないからです。




<nonnotte>
”Unstructured Tailored Jacket”
COL : DEEP BLACK
SIZE : 4, 5
¥68,200 TAX IN
“Lineon”からは、ジャケットとパンツのセットアップをご用意しました。
ジャケットは裏地を持たない、軽やかなアンコン仕立て。
構造は削ぎ落としながらも、
ただラフなだけで終わらない輪郭を描きます。
着丈と袖丈は、やや長め。
身体とのあいだにほんの少し余白をつくり、
空気を含ませることで、重さを感じさせず縦にすっと落ちる。
動いたときに生まれるドレープが、そのままシルエットになる設計です。
リネンのジャケットは、どうしても表情が粗くなりがちで、
良くも悪くもカジュアルに振れやすい素材。
けれど“Lineon”で仕立てると、
その印象は大きく変わります。
高密度ならではの締まりと、レーヨンがもたらす艶。
粗野さではなく、繊細さが前に出る。
軽やかなのに、どこか静かな緊張感がある。
上品さとモードが、同じ面に共存する。
そんなバランスを、自然体でまとえるジャケットです。




<nonnotte>
”Draw Cord Wide Straight Trousers”
COL : DEEP BLACK
SIZE : 3, 4
¥46,200 TAX IN
パンツもジャケットと同様、ノータックでミニマルな設計。
装飾で語るのではなく、
あくまで削ぎ落とした構造で見せる一本。
余計な線を引かないからこそ、
“Lineon”という素材の陰影や落ち感が、まっすぐ伝わってきます。
さらっとした肌あたりと、驚くほど軽やかな生地感。
ウエストはドローコード仕様で、
穿き心地はあくまでリラックス。
それでも不思議とラフに見えないのは、
腰まわりの収まりと、縦に落ちるラインが整っているから。
裾にかけてすっと落ちる、潔いシルエット。
力を抜いて穿けるのに、
どこか背筋が伸びるような空気がある。
リラックスと、ほんの少しの緊張感。
その両方を自然に共存させた、
大人のためのワイドスラックスです。

“Eau de Tailleur(オー・ド・テイラー)”
直訳すれば「テーラードの水」。
その名の通り、肌に触れた瞬間の印象はとにかく軽やかで、しなやか。
真夏でも張り付くような不快感はなく、すっと体から離れてくれる。
まさに、水のようなタッチです。
ウォッシャブルウールと聞けば、便利な素材、という印象が先に立つかもしれません。
確かに家庭洗濯が可能で、シワにもなりにくく、型崩れもしづらい。
でも、この生地を単に“ウォッシャブルウール”で括ってしまうのは、少し乱暴な気がします。
一般的なウォッシャブルウールは、薬品処理によって毛羽を抑えます。
けれど “Eau de Tailleur” は薬品を使わない。
紡績の段階で、毛羽を内側に巻き込むように撚糸することで、
自然な方法で毛羽立ちを抑え、表面を美しく整えています。
さらに、ウールの風合いを損なわない範囲で、
糸の芯にわずかにナイロンを仕込む。
それによって強度と形状安定性を高め、
軽さとタフさを両立させています。
高級感のある艶。
ウール特有の滑らかな肌触り。
そこにナイロンの芯が支える安心感。
機能素材の顔をしながら、
どこまでもテーラードのために作られた生地。
ウールの良さは、実は夏にこそ発揮される。
その考えを突き詰めた結果生まれた、
上質で、理にかなったウールギャバジンです。




<nonnotte>
”Draping Crotch Box Pleats 1Tuck Trousers”
COL : IVORY DUST
SIZE : 4, 5
¥57,200 TAX IN
そんな “Eau de Tailleur” を用いて仕立てられた、ワイドトラウザーズ。
しなやかで軽やかな生地感。
それでいて、股下に施されたボックスプリーツがしっかりと立体をつくり、
裾へとまっすぐに落ちていくシルエットを描きます。
余計な装飾はない。
でも、歩くたびにウールの艶と分量のある生地が呼応して、
上品なドレープが静かに揺れる。
軽さがあるからこそ、落ち感が際立つ。
素材の特性を理解したうえで引き出された、計算されたワイド。
デザイナー自身が「ブランドのシグニチャーにしていきたい」と語るのも頷けます。
素材の思想と、パターンの美意識。
nonnotteらしさが最も素直に表れている一本です。

“Eau de Chemise(オー・ド・シュミーズ)”
最後は、先ほどご紹介した “Eau de Tailleur” と同じ糸を用いて織り上げた、シャツ専用の平織り生地。
袖を通した瞬間に感じるのは、ふわりとしたエアリーさと、さらりと抜ける清涼感。
水を一枚まとっているような、あの軽やかさです。
シャツはどうしてもシワと隣り合わせ。
夏場に着るなら、着るたびに洗いたい。
でも、そのたびにアイロンをかける手間が頭をよぎる。
このシャツは、そんな煩わしさから少し解放してくれます。
ガンガン洗えるタフさがあり、洗いざらしでも美しい。
きっちりとプレスをかけなくても、自然と整った佇まいを保ってくれる。
何度洗っても色褪せない。
その奥にある“芯”のような強さが、この生地の本質なのだと思います。
軽いのに、頼りないわけではない。
涼しいのに、薄っぺらくない。
nonnotteが目指す「今、この瞬間に着たい服」を体現した一枚です。




<nonnotte>
COL : RUST BEIGE
SIZE : 4, 5
¥42,900 TAX IN
生地の程よい透け感に対して、控えめなパイピングがコントラストを生み、
静かなアクセントとなったストライプシャツ。
柔らかい印象を与える襟のラインや、
たっぷりと取られた身幅が自然に縦に落ちるシルエット。
ベースはパイピングシャツやパジャマシャツと呼ばれる形ですが、
このシャツはリラックスウェアの延長ではありません。
このシャツにつけられた名前は、
「眠る人」を意味する”Dormeuse Shirt”。
ですが、それは眠るための装いという意味ではなく、
目を覚ましている時間を美しく、静かに過ごすための服という意味なんだそう。
眠るためではなく、
日常に余白を与えてくれるシャツです。
装飾や派手なデザインで目を引くわけではない。
素材、仕立て、パターンと真摯に向き合い、
nonnotteの持つ理想の形に近づける。
その完成度の高さに、自然と目を惹かれるんです。
流行りに左右されず、
常に「この瞬間1番着たい」という服であり続ける。
一度袖を通せば、
その理由がきっと伝わるはずです。
cliché 石橋