残したい技術と洋服。
こんにちは。
clichéの木下です。
ご存知のように、使われている生地をオリジナルで作っているcantate。
手が込んでいるということはそれぞれのブログでご紹介して来ましたが、
今回新たに入荷したコート。
このコートに使われている"本パイルメルトン"という生地がスゴイ。
早速ですが、まずは生地について話します。
他では表現できないとも言われる、二重織りのパイル織りのヘリンボーン地。
経糸にSuper160's、緯糸にラムウールを採用したウール100%で、
経糸で全体的な風合いを良くしつつ、緯糸でパイルの山をしっかりと残したようなイメージです。
通常の本パイルに比べると、原料も非常に贅沢なものを使用しているのでタッチも繊細。
正にcantateらしい一着と言えます。
ここまでも素晴らしいが、感動したのはここではなく。
生地が出来上がってから、使用出来る生地に仕上げるまでの加工工程が、僕が感じたスゴイポイント。
糸から生地になり、普通ならそこから洋服作りに移るが、
この生地における完成は、この加工後なんだと言う。
見た目からも、勿論触ればわかるけれど、
とんでもなく度目の詰まった丸みのある生地感。
厚みがあり、非常に滑らか。
パキッとしたシワではなく、品のある柔らかいシワが入るような風合いです。
そんじゃそこらの生地ではない、気が遠くなるくらいの時間がかかっているだろうと感じてしまう圧倒的な存在感。
聞いてみると、
"この生地やべえから、めっちゃ時間かかってるから。"
と松島さん。
ということで、ここからは僕なりに深掘りをしていきます。
まずはじめに言っておきたいのが、
この加工が出来るのは世界でも数社、日本だと一社だと言うこと。
(!?)
生地のベースが完成後、縮絨と起毛加工を施していきます。
パッと聞いただけでは、あぁそうか、となってしまいますが、
加工にかかる日数はなんと約1ヶ月〜2ヶ月。
ちゃんと仕込んでおかないと納品も遅れそうなものである。
加工の工程としては、生地を洗って油分を落とし、
ローラーで挟み込んで洗剤と水を入れ、加工し易いように綺麗にしていくところから始まります。
そこから縮絨をかけていくんですが、縮絨とは簡単に言えば圧縮ウールとも解釈できます。
例えば数十メートルの生地があるとすると、そこに縮絨(圧縮)をかけることで面積も小さくなります。面積が小さくなると、外側が内側へ。
中身がギュッと詰まるというのか、ようは厚みが増す。
加えて柔らかさ、生地がしっかりとするので、この後行われる起毛加工に耐えれる生地が出来上がるんです。
そして生地の乾燥後いよいよ起毛加工。毛をかいていく作業です。
ローラーのような機械で、回転数などを熟年の匙加減で調整していき、
その後毛羽を落として毛を刈る。
縮絨する→起毛する→毛を刈る→縮絨する→起毛する→...
この工程を約5回にわたって繰り返す。気が遠くなりそうですが、、
しかも季節やロットによって回数も変わるらしい。。
他所ではやらない、非常に手が込んだ生地。
天然繊維特有の魅力を存分に引き出し、着る側にとってみても抜群の着心地を実現してくれます。
日本に一社ということは、この技術も見れなくなる日が来てしまうのかもしれない。
cantateの洋服はそういった技術の継承も担っているということも、忘れてはいけません。
そして出来上がる、ふんわりとしたコーデュロイのような毛羽がある生地が"本パイルメルトン"。
元は毛羽がなく、ぱっと見でヘリンボーンが見て取れるくらいですが、
完成後はぼやっとして奥行きのある上品な仕上がりとなっています。
経糸・緯糸で色を変えたシャンブレーなので、雰囲気増し増し。
値段が高いとは言いますが、これほどちゃんと聞くと頷ける。
ちなみに、ここからご紹介するコートは、
他メゾンブランドで作ると80〜100万くらいするらしい...
正直な値段がこれ。最高の満足度を提供してくれるはずです。
cantate
¥330,000 (TAX IN)
今回入荷したコートは2型、まずはダッフルコートから。
ゆったりと長めの着丈、フードのついたオーセンティックな仕上がりのコートです。
ストームパッチ、袖のストラップ、大きめのパッチポケットにトグル。
ずっしりとしているようにも見え、実際重いとも言えますが、
着てみると肉厚なのに重さを感じない、柔らかくてノンストレスな一着。
光沢とドレープも豊かに、早く着て外に繰り出したい気持ちにさせてくれます。
トグルは4つ。
レザー紐がよく見られますが、麻紐を使用し、敢えて粗野な雰囲気に。
フロントにポツンとついているボタンは、開けて着用した時にヒラヒラしないようにつけた配慮のボタン。
後ほど着用写真でも載せますが、ボタンを留めて着用した時の綺麗なVゾーンがかっこいいんですよね。
cantate
¥275,000 (TAX IN)
続いてこちらのマックコート。
比翼仕立てでシンプルに仕上げた、ミドル丈で落ち着いた佇まいのコート。
先程のダッフル同様に、ふっくら感が感じられる。
襟やフラップポケットの陰影、袖の曲線であったりと抜群の表情です。
共にポケットの中には同色のコーデュロイを忍ばせ、手袋いらずなのも嬉しい。
内側は半裏で、ライナーにはコットンキュプラを。
袖裏にはコットンシルクのサテンヘリンボーンを使用し、
袖通しも非常に気持ち良く、見えないところへの拘りが溢れています。
細かくも手でまつられた部分を見ていると、
作り手の思いがひしひしと伝わってくるようです。
着用サイズ:48 (175cm)
CREDIT
cantate "The Band Collar Shirt" ¥48,400 (TAX IN)
cantate "Fluffy Pants" ¥45,100 (TAX IN)
着用サイズ:46
cantate "Crew Neck Sweater" ¥121,000 (TAX IN)
cantate "Denim Flare Trousers" ¥49,500 (TAX IN)
着用サイズ: 44
着用サイズ:46 (175cm)
CREDIT
cantate "Turtle Neck L/S Shirt" ¥25,300 (TAX IN)
cantate "Denim Flare Trousers" ¥40,700 (TAX IN)
着用サイズ:48
CREDIT
cantate "Crew Neck Sweater" ¥121,000 (TAX IN)
cantate "Moleskin Trousers" ¥60,500 (TAX IN)
nine tailor "Curtisii beret" ¥8,800 (TAX IN)
普通にかっこいいコートですが、生地の話に全部持って行かれてしまう。
それくらいやばい生地です。
実際僕も色々知った時に、やばってなりましたし、
日本にこの加工ができるのは一社しかないなんて。。
パワーワードでしかない。笑
今の職人がいなくなったらできなくなってしまう。
そう言う松島さんに、継承はされていかないのか?と聞くと、
これは見て覚える継承だから、出来る人は殆どいない。と言います。
めちゃくちゃ良い生地を作ると言っても高いは高い、中々作ることも少ない。
そうしてお願いする人がいなくなったら、
それと共にこの技術も継承されなくなって衰退していく。
作らないと産業として終わる。
こんなにも素晴らしく、 残って欲しい技術であるのに。
だからこそcantateはこの物作りをやめない。素敵だなあ。
拘るならとことん。
僕が知る限り、ここまでモノというところに焦点を当てて作り込んでいるブランドはない。
そこに工場、職人の唯一無二の技術が相まっている。
聞いて驚く、触って・着て感動する。
これは、残したい技術が詰まった、
残すべきブランドの洋服だ。
cliché 木下