常連になるスウェット。
「常連」とは、なんでしょう?
毎週のように通う人なのか。店主に名前を覚えられている人なのか。
先日、そんなことについて書かれた文章を読みました。
そこには、常連とは通った回数でも、店との関係を人に語るための肩書きでもなく、その人がいることで店の空気が自然に成立するような客なのではないか、とありました。
たしかに、自分から「俺、あの店の常連だから」と言う人より、いつの間にかそこにいて、いつもの席で、いつものものを頼んでいる人のほうが、ずっと常連らしく見える。
大きな声で親しさを見せることもなければ、初めて来た人に自分の存在を知らせようともしない。ただ、いつものようにそこにいる。その人がいることで、店の空気が自然に整う。
常連とは、回数ではなく、馴染み方なのだと思います。
こんばんは。cantáte 松島です。
服にも、似たようなものがあります。
買った日に写真を撮りたくなる服もあれば、着たことすら忘れている服もある。
洗濯から戻ってきたら、何となくまた手に取る。
店へ行く日も、長い移動の日も、少し疲れている日も着ている。扱いは少しずつ雑になっているのに、なぜか手放せない。
生活に深く入り込んでいるのは、たぶん後者です。

<cantáte>
" Essential Zip Sweat Parka "
COL : FADED BLACK , DIRTY L/GRAY , WHITE
¥60,500 TAX IN
" Essential Sweat Pullover "
COL : FADED BLACK , DIRTY L/GRAY , WHITE
¥51,700 TAX IN
" Essential Sweat Wide Pants "
COL : FADED BLACK , DIRTY L/GRAY , WHITE
¥60,500 TAX IN
スウェットは、そういう服だと思います。
着るために予定を決める必要もなければ、合わせ方を深く考える必要もない。寝坊した朝でも、少し疲れた日でも、考えるより先に手が伸びる。
それでいて、鏡を見たときに「今日はもういいか」と諦めたようには見えない。そのくらいの距離がちょうどいい。



素材には、アメリカ綿を使ったヘビーウェイトの裏毛を使用しています。
肉厚で、手に持つときちんと重さがある。裏側には、昔ながらのスウェットらしいループがしっかりと立っています。
世の中には、もっと厚いスウェットも、もっとヴィンテージらしく見えるスウェットもあると思う。
でも、僕が欲しかったのは、
厚さそのものではなく、その重さによって生まれる落ち方でした。



薄く柔らかなスウェットは、着た瞬間から身体に馴染みます。
その反面、身体の線を拾いやすく、洗濯を重ねるうちに輪郭が頼りなくなる。
この生地には、身体から少し離れたところで形を保つだけの厚みがあります。
肩から胸へ、腰から裾へ。生地の重さで線が下へ落ちるため、ゆったりしていても必要以上に膨らんで見えない。
裏側を強く起毛させ、最初から柔らかく見せることもしていません。触った瞬間だけなら、もっと分かりやすく気持ちのいい生地はいくらでもあるでしょう。
けれど、この裏毛は、洗濯を重ねるうちにループがほぐれ、着る人の身体に馴染んでいく。表面にも擦れやアタリが生まれ、新品の均一な顔から、その人の服へと変わっていきます。



ただし、風合いが変わることと、形が崩れることは別です。
味が出ましたと言いながら、首が伸び、着丈が詰まり、膝が出てしまったら、それは少し都合が良すぎる。
古着なら、それも含めて面白い。けれど、新しく作る以上は、時間が経った姿まで考える必要がある。
通常は縦方向に使う生地を、横向きに取る。リバースウィーブに代表される、昔からある方法です。洗濯や着用による縦方向への伸びや縮みを抑え、シルエットを崩れにくくしています。
昔のスウェットには、毎日着て、何度も洗い、それでも使い続けるための工夫が残っています。
横地使いも、古着らしく見せるための飾りではありません。
必要があったから、そう作られた。
僕が惹かれるのは、見た目よりも、その理由です。
縫製も、簡単なロック始末ではなく、二本針で仕上げました。ステッチの間隔も細かく設定しています。裏返さなければ、ほとんど見えない部分です。
それでも省かなかったのは、スウェットが丁寧に扱われる服ではないから。雨に降られ、鞄に押し込まれ、洗濯機へ放り込まれる。
雑に扱ってもいい服ほど、作る側まで雑にしてはいけないと思います。



新型のパーカーも、その考え方は同じです。
プルオーバーより脱ぎ着がしやすく、ジャケットよりずっと気軽。
少し肌寒ければ羽織り、暑くなれば脱ぐ。季節の境目だけでなく、移動中や室内でも、生活の中へ入り込みやすい。



フードは、ただ被るためだけに付けたものではありません。横や後ろから見たとき、首元にどのくらいの量があれば、姿がきちんと収まるのか。
立ち上がりすぎると妙に勇ましく見え、寝すぎると後ろ姿が頼りなくなる。
肉厚な生地の重さを考えながら、立ちすぎず、潰れすぎない分量と角度。

ファスナーの引き手には、ディアスキンを使っています。とても小さな部分ですが、着るたびに必ず指で触れる場所です。冷たい金属だけを摘まむより感触が柔らかく、使い込むほど手に馴染んでいく。飾りではなく、何度も開け閉めする服だからこその仕様です。


Wide Pantsは、トップスと同じく生地を横向きに使い、腰まわりから裾までズドンと落ちるワイドストレートにしています。裾は絞っていません。


スウェットパンツで気になるのは、楽であることよりも、楽を選んだように見えてしまうこと。だから、生地の厚みと重さを使って輪郭を作りました。
身体は楽なのに、見た目はだらしなくならない。
この少し矛盾した感じが、僕は気に入っています。



ポケットは、両脇のシームに沿わせたものだけ。余計なディテールを加えず、生地の厚みとパンツの線がそのまま見えるようにしました。
スニーカーはもちろんですが、革靴を合わせてもいい。上にはシャツやジャケットを着てもいい。スウェットを無理に上品に見せるのではなく、スウェットのままで、革靴やジャケットの隣にいられるようにしています。



そして、今回新しく加えたWHITE。
スウェットの素朴さが、いちばんそのまま見える色だと思います。誤魔化しが利かないぶん、生地の厚みや乾いた表面、縫い目によって生まれる陰影までよく分かる。
真っ白なまま大切に保管するのではなく、ほかの色と同じように着て、洗ってほしい。
袖口や裾に、その人なりの時間が少しずつ残っていく。

パーカー、プルオーバー、パンツ。上下で着てもいいし、それぞれを普段の服へ混ぜてもいい。
パーカーの上には、コートやジャケット。
プルオーバーには、穿き込んだデニム。
パンツには、白いシャツや革靴。
少し性格の違う服と合わせたとき、このスウェットの立ち位置がよく分かる気がします。

最初に袖を通した日に、すべてが伝わる服ではないと思う。
二本針の縫い目も、横地使いの効果も、買ったその日には大した意味を持たないでしょう。
それが分かるのは、何度も洗ったあとかもしれない。
あるいは、そんなことには一度も気づかないまま、ただ着続けてもらうのが正しいのかもしれない。

常連の人に、「あなたは顔ですね」と確認することはありません。
いつからそうなったのかも、たいてい覚えていない。
気がつけば、いつもの場所にその人がいる。
服も、そのくらいでいい。
洗濯が終わったら、また着ている。扱いは雑になったのに、新品の頃よりも手放せなくなっている。いつからかは分からない。けれど、いないと少し困る。
そんなふうに、いつの間にか皆さんのワードローブに馴染んでいたら。
それが、このスウェットにとって、いちばん格好いい着られ方だと思います。
cantáte 松島 紳
