縦に長いジャケット。
こんにちは。
clichéの木下です。
2月くらいに入荷があったものの、寒すぎて紹介していなかったジャケット。
ようやっとオンシーズンが来たので、ご紹介させてください。
CLASS
¥140,800 (TAX IN)
ヤクとウールを使用した、2Bのジャケット。
裏地はなく、薄手でリネンのようにドライなタッチの一着です。
半袖やタンクトップに羽織る。
もちろん通気性は高く、ベタつかない為、夏に特化していると言えます。
タイトフィッティングなのでレイヤードは出来ず、
インナーにはシャツかカットソーを着るくらいのもの。
もはやカーディガンのような立ち位置とも取れる、
"無駄に羽織る"ジャケット。
無駄とはいってもプラスの要因です。
なくてもいいけど、あったほうがいい。
茹だるような暑さで、どんどん削ぎ落とされていってしまう、
真夏のファッションにとって難しいテーマを、
いとも容易くクリアしてくれることでしょう。
今までは大きく、ガバッと羽織るジャケットしか視野にありませんでしたが、
ややドレッシーな印象が大人っぽくも、エッジが効いています。
それはそうと、ヤクにウールって。
めっちゃ冬っぽいな。
写真で見てもわかるように、細く上質な繊維を平織りした、スケスケな生地。
いわずもがな、涼しいです。
ヤクといえば、標高4000-6000メートルの草原や岩場に生息するウシ科の生物。
標高が高い分、寒そうな印象を受けますが、
どうやら1日の寒暖差は30度にもなる、非常に過酷な地域なんだと言います。
ヤクは自身で体温調節が出来ず、夏を迎える前には毛を梳き、
軽装にしてあげるそう。(人間と同じですね。)
その梳いた毛や、自然と抜け落ちた毛が採取される主な原料になる。
通気性、保温性、保湿性に長け、毛玉もでき辛く、柔らかい。
織り方、編み方によっても肌触りや保温性が変わる、実はウールと同じで通年使える原料です。
外側の毛は外敵から身を守るためストレートで丈夫なのに対し、
衣類に使われているのは縮れた産毛。
ヤク50% / ウール50%
このジャケットはウールを混ぜることによって、強度を持たせているという訳。
なるほど、そういえば、、
cantateのカシミヤニットにも強度、元に戻る性質を生かす為、
ウールを混ぜていましたね。
で、なんでこんな高いのよ?
ヤクはお腹やあごの産毛のみから採取されるので、ゴミを取り除いて洗浄したら、一頭あたりで採取できる量なんて、たかが知れています。
おおよそマフラー1本分。厳しいですね。
さらに採取の時期も限られていると聞くと、貴重さが手に取るようにわかります。
毛芯を用いた、背筋の伸びるようなジャケットを作るならまだしも、
またこんなにも縦長く、不思議なジャケットを作るのだから。
本当にCLASSはバラエティに富んでいる。
歪な形をした水牛ボタン。
カフスがなく、シャープに落ちる袖。
フロントのダーツ、センターベント。
高めのゴージライン、ナローラペル。
ボタンはもう一個つけられそうな余白を残し、
腰回りの運動量を確保するためにセンターベントを採用。
あらゆる点で逆を突いているというのか、
AとBという選択肢があってみんながAに行く中、全部Bみたいな感じ。
異端的です。
ボタンを留めればウエストラインでシェイプして引き締まる、細いライン。
細く、長く、スタイリッシュ。
荒々しい印象を持たせながら、ドレッシーに仕上げられた一着でしょう。
CREDIT
m's braque "KITE SHIRT" ¥42,900 (TAX IN)
cantate "Regular Chino Trousers" ¥42,900 (TAX IN)
CREDIT
m's braque "MOCK NECK TEE (VOYAGE)" ¥37,400 (TAX IN)
m's braque "EASY PANTS" ¥41,800 (TAX IN)
10eyevan "NO.3 III BR" ¥80,300 (TAX IN)
はじめ手に取ったときはCLASSの中でも買いやすい、
ラフに羽織ることができるといった印象のジャケットでしたが、
地雷を踏んだかのようにいびつで、着方のバリエーションが少ない。
インナーはTシャツ、ドレスシャツ。
こうして軽装というところにフォーカスを当ててみると、
パンツも太さを押し殺すように、パンツに馴染み、
縦のラインを強調する綺麗なフォルムになります。
合わせは至ってシンプルに。
初見の"長ぇなっ!"に捉われず、あらゆる偏見を捨てて、
価格を初めとする壁を乗り越え、
手に取った人のみにわかる魅力が詰まっています。
洋服との向き合い方を教えられるジャケット。
テーマになる"反観合一"というのは、「反のうちに合一を知ること」という、
相反したものを見たときに、一方を切り捨てるのではなく、
反したままで一つに合わせている関係を観ることを意味します。
交わらないものを合わせて見る。
和食とワインだって一緒に食べていたら、交わる部分があるかもしれない。
それらをこのジャケットに置き換え、間違い探しのように見て、身にする。
多くを語らずに投げかけられたこの一着は、
解くことができない数学の問題みたいです。
そういえば、展示会で質問しまくっていた何かの拍子で、
洋服を手放してしまうことに関する話になりました。
「別にそれって悪いことではないけど、簡単に手放してしまうのはやっぱり勿体無い。自分にとってその一着をモノにできた、吸収できた、着用する以外の観点で紐解き終えたのだとしたら、最悪手放してもいいじゃないかなあ。」
堀切さんはそう言っていました。
モノにする。その考え方でいけば、
このジャケットは一生かけてもモノにできそうにありません。
初めは着られてもいいんです。
一生をかけて紐解いていくくらいの不可解さがあるんじゃないでしょうか。
洋服に向き合う楽しさを、生涯をかけて教えてくれそう。
もしかしたら運命の一着に・・・。
洋服にそんなことは求めていない?
いやいや、「反のうちに合一を知ること」ですよ。
どうでしょう、ワクワクしませんか?
cliché 木下