長編映画を見ている気分です。
こんにちは。
clichéの木下です。
今年の納品も大詰め。
僕の購入リストも着々と納品完了し、残すところ約数点になりました。
職業柄、半年前に自腹買いをオーダーするといつも言っていますが、
季節は夏なので、意外と難しく、そして楽しい。
大物になるとなおさら、こっちにしておけばよかったかな...と今でも悩みます。
そうして先日届いたコートとスタジャン。
また僕は普通じゃない方を選んでしまいましたが、再度袖を通すと、
半年前の自分は間違っていなかったんだ、と納得しました。
オーダーしたのはOLD ROSEのスタジャン。
悩んだのはBLACKのコートでしたが、
数年前からスタジャンを探していたこともあり、即決。
僕らは買い物というより、答え合わせをしているという感じに近い。
cantate
¥330,000 (TAX IN)
cantate
¥275,000 (TAX IN)
決め手は、本パイルメルトンでした。
去年のダッフルコート、マックコートでも記憶にあるように、
僕も杉村も本パイルメルトンを使用したダッフルコートを所有していて、
ダウンに匹敵する暖かさ、そして着心地が素晴らしいことを知っているし、
実際にヘビロテしているからお墨付きだったんです。
ダッフルならもう必要ないけれど、これはまた別物。
だからこそ、あとはデザインを選ぶだけなのに、デザイン選びが超難航....
コートにするべきか、スタジャンにするべきか。
どちらも新型で、コートはダブルのハーフ丈。
ガウンのように着られる余裕を持たせたサイズ感で、
全体的に程よく大きいレディースのコートのような雰囲気。
スーツの上からストレスなく着用でき、
カジュアルにもドレスにも振れる点も優れた一着です。
カラーはともに、BLACKとOLD ROSE。
スタジャンは至ってシンプルなものですが、
本パイルの重量感が、いい意味でアンバランス。
ヘビーアウターに使用されることが多いながら、
コンパクトな見た目で冬を過ごせるアウターとして。
どちらも今期のテーマ、
"スタイルをよく見せる"というポイントを踏襲し、
ゆったりしていても野暮ったくない、縦のラインを強調するようなフォルムです。
コートは丈を長すぎず、スタジャンは丈を長く。
袖に対して丈を絶妙に調整することで、
よくあるオーバーサイズの丸みやボリュームを抑え込んでいます。
年齢問わず、この先も長く着られるサイジング・フォルムだということです。
使用している本パイルは、生地ができるまでに約2ヶ月を要します。
手前味噌な表現ですが、非常に手の込んだ、手間のかかる生地。
言うなればじっくり、じっくりと時間をかけて作った、
名店の秘伝ソース。
真似しようとしてもできないレベルであり、
日本ではこのクオリティの生地を作ることができるのは、
わずか一社のみだと言います。
特徴は柔らかく、保温性に優れていること。
腕を曲げた時に入る肉厚でふっくらとしたシワや、
タッチが繊細なのにも関わらず、しっかりとパイルの山を感じられる表情。
単純に見て触って感じられる魅力の裏には、
職人さんたちのとんでもない苦労があるのです。
2かげつぅッ!
アディショナルタイム7分の本田圭佑もびっくり。
2ヶ月という数字は、"生地ができるまで"ではなく、"できたあと"の話です。
織りも大事ですが、加工が他との命運を分けるポイント。
この生地は大きく作った生地に縮絨をかけ、
徐々に生地幅を縮め、目の詰まった厚みのある生地を作り出しています。
一丁の豆腐の両端を潰したら、密度が上がるみたいな考え方で、
生地がしっかりすることで、ハリがあって光沢を持ちながらも、
柔らかく着心地の良いパイルになる。
その後が熟年の技。
起毛をかけるのですが、毛羽を落として毛を刈る作業を繰り返していく。
大まかにここまでが作業の一つですが、合計約5回ほど行います。
季節によって原料の調子も変わるので、
場合によっては、増えることもあるそう。。
一社、そして職人の数も限られることから、
この生地が作られているのは、ほんの一握り。
つまり、"本パイル"というものは世の中にとても少ないということです。
もちろん金額も上がりますが、正直にはこの金額がデッドライン。
身近にある本パイル。まず疑い、そして比べてみてください。
触り心地、見た目、全てにおいて圧勝のはず。
買う前もそうですが、買ったあと、
着ていったあとの魅力の実感は、もっと大きなものになる。
そうじゃなければ、こんな飽き性な僕が、
数年にわたってダッフルコートを愛用しているはずがありません。
裏地にはコットンキュプラ。
スーツ同様にフロントにはストラップを施しているので、
なびかせるのか、インナーを見せたりしながら使ってみてください。
袖裏はコットンシルク。
お馴染みではありますが、この見えない部分の抜かりの無さも肝。
もし半袖のTシャツの上に着るときがあったとしても、本当に心地がいいです。
また、厚手な生地なので機械で縫うことは難しいため、
手縫い箇所があることも静かに魅力的です。
機会があればぜひ手に取って、縫製の美しさを見ていただきたいもの。
コートのみ、ポケットにはハンドウォーマーのコーデュロイを配置。
原料は、前回がラムウールのヘリンボーン。
今回は、ブリティッシュウールの綾織。
ぱっと見の大きな変化はありませんが、
ヘリンボーンは効率よく厚みを出すのに長けている反面、
ヘリンボーンではないことで、より柔らかい触り心地になっています。
僕が持っているダッフルも4、5年前と記憶していますが、
その時もヘリンボーンだったため、
同じじゃつまらないからと、今回は変化を持たせたとのこと。
比べると15〜20%ほど柔らかさに違いが出るらしく、
着てみると確かに軽く柔らかい、違いを実感できます。
だとしたら度詰めじゃなくて、甘いのか?
と言ってもそうではなく、超度詰めなのは僕が保証します。
ヘビーアウターではありますが、スタジャンと緩めのコートなので、
レイヤードも存分に楽しめるように、とメッセージが込められているかのよう。
ほうほう。ではまず、
実際に購入したOLD ROSEのスタジャンで、
着心地を確かめてやろうじゃないですか。
CREDIT
cliché "ROVING 5G CREW NECK KNIT" ¥60,500 (TAX IN)
cantate "The Shirt" ¥48,400 (TAX IN)
スタジャンを買ったらしようと思っていたのは、
去年習得した、タイドアップしたスタイル。
ここにキャップを被ったりしながら、
ストリートの雰囲気を混ぜて着ていきたい。
古着を買っていた時によくしていた、
ピンズや缶バッチでデコるのも楽しみの一つとして残しています。
いいのが見つかり次第、僕の左胸はギャルになっていると思うので、
つけすぎていたら注意してくださいね。
ちなみに着心地としては本当にノンストレス。
シャツ、厚手のセーター、、ここまで着たら動き辛いっしょ?!
と、言われそうですが、肩肘張らないとはこのこと。
詰まっているのに、しなやかな分動き辛くならず、可動域があります。
ラフに羽織るスタジャン、これは買ってよかった。
色味はいわゆるピンクですが、ココアのようなブラウンを混ぜたカラー。
OLD ROSE = 枯れたバラという、ややロマンチックなネーミングですが、
まだ枯れた状態ではなく、枯れかけたバラでしょう。
枯れかけならここから復活の兆しもあるので、
日光を当てて外に連れ出し、栄養分を与えてやりましょう。
自宅のお花に水を上げ、毎日手入れしてあげる気持ちでヘビロテっス。
着用サイズ:44 (168cm)
CREDIT
cantate "The Shirt" ¥48,400 (TAX IN)
cliché "ROVING 5G OVER KNIT VEST" ¥49,500 (TAX IN)
m's braque "NEW FLAIR PANTS" ¥50,600 (TAX IN)
10eyevan "NO.3 III BR" ¥80,300 (TAX IN)
最後の最後までスタジャンと天秤にかけたブラックのコート。
僕は良い服はたくさん持っているつもりです。
でも癖ありな服ばかりを選んでしまうので、
たくさん服があるのに服がない気分です。
スーツを着始めたせいか、スーツの上から羽織りたいと思ってしまったんですよね。。
ぴちぴちのチェスターを合わすのも良いが、
スーツにDENTSの手袋、サングラスでダンディに...
変わりに誰かやってください。
片手にコートをご用意してお待ちしております。
着用サイズ:48 (175cm)
CREDIT
cantate "Trucker Jacket Inspired by “On the Road”" ¥81,400 (TAX IN)
cantate "Turtle Neck L/S Shirt" ¥27,500 (TAX IN)
m's braque "EASY PANTS" ¥48,400 (TAX IN)
すでに色があるのに、さらに色を合わせたくなってしまう、天邪鬼です。
派手な色であれば難しいですが、くすんでいるカラーだからこそ、
ウォッシュインディゴ、ヘリンボーン、
ブルーやグリーンを足しても喧嘩し辛いのが魅力。
いつもと違う色物を買う時は、ある程度合わせ方を熟知してから買いたいもの。
その点このカラーは、ほとんどの色合わせを包み込んでくれて、
他が落ち着いたカラーの時はしっかりと主役を張ってくれます。
ただ、赤だけはNG。笑
着用サイズ:48 (175cm)
CREDIT
cantate "Fluffy Flight Parka" ¥70,400 (TAX IN)
cantate "Turtle Neck L/S Shirt" ¥27,500 (TAX IN)
cantate "Garment Dye Pants" ¥55,000 (TAX IN)
Nine Tailor "Nandina Watch" ¥9,900 (TAX IN)
SALOMON "XT-6 GTX" ¥31,900 (TAX IN)
スポーティーに、スクールライクに着たいスタジャン。
スウェットパンツ、スニーカーにパーカーを着てラフに。
パンツが極太じゃなくても馴染む、丈の長さがここでも活きてきます。
首周りも狭すぎず、フードを出しても余裕あり。
やはりスタジャンといえば、リブのボーダーがポイントになりますよね。
シンプルな中に、ちょっとしたアクセント。
着用サイズ:46 (168cm)
CREDIT
cantate "Pure Cashmere Grunge Sweater" ¥165,000 (TAX IN)
杉村が丁度リオスを履いてきていたので、
インナーとパンツを指定して、僕がやりたかったスタイリングを体現。
淡いカラーでブーツイン。
かなり良い...
今季のcantateの納品もこれで終了です。
今年もたくさん買ってしまった。
でも後悔はありません。
デザインは強すぎず、一度手にしてしまったら、
手放すことがまず勿体無いと思ってしまう面々。
一辺倒に良いものなのではなく、
職人の技術を後世に継承することを軸に、良いものをみんなで作り出すブランド。
時間をかけて、工夫を凝らして作られていること、
ヒットアンドエラーを繰り返し、今に至る最高の技術の踏襲。
着ていて、だた最高だ。
そう実感できることに加えて、どう作られているのか気になってしまい、
結果調べていくことで、今後の洋服選びにも差が出る、
着る以外の魅力がたくさん詰まっています。
格好が良い、だけじゃないアウターたち。
こんなにも、幸福度を味わうことができる買い物はないと思います。
あ、そういえば、豆腐と豆富の違いってみなさんご存知ですか?
どちらも正解みたいですが、元は豆腐。
でも"腐"という漢字の印象がよくないので、
当て字として"富"が使われるようになったそうな。
こういうの、知るだけでも面白いし、明日食べてみようとか思える。
僕はたまたまオリジン弁当をみて疑問に思って調べただけですが、
何で、何で?と疑問を繰り返し作られているとよくわかるcantateの洋服は、
長編映画ばりに面白いということです。
cliché 木下