普遍に、ひとつの違和感を。
効率より誠実。そんな服がひとつくらいあっていい。
Frisson Cashmere Scarf|洋服にも、着物にも馴染むマフラー
時間が滲む服。
フォレスティエールという小さな風景
こんにちは。
clichéの石橋です。
アメリカ空軍のパイロットの服として40年代に生まれ、
ミリタリーフライトジャケットの代表格として存在し続けている MA-1。
いまでは、さまざまなブランドが
いろんな生地や仕様で展開しているのを目にします。
ナイロン、レザー、コットン。
ブランドごとにオリジナリティを表現しているものの、
ベースにある “MA-1”という服は、もはや普遍的な存在。
そして今回ご紹介するのは、
“普遍”という言葉とは少し遠い場所に立つブランド、BLESSが提案するMA-1。



<BLESS>
COL : BLACK
SIZE : XL
¥695,200- TAX IN
使われているボディはALPHA社製。
MA-1の誕生以来、何十年にもわたり生産を続けてきた、いわば“本家”の存在です。
“MA-1といえば”の王道ボディを採用していることで生まれる
安心感と実績のある安定感。
そこまでは誰もが想像できる流れ。
ただ、目を凝らしてみても——
BLESSらしい創造の痕跡が見当たらない。
どこかを切り離したり、つなげたり、
新しい構造を強引に組み込んだ気配もない。
ぱっと見は、どう見ても “そのままのMA-1”。
紛れもないMA-1でありながら、
「ただのMA-1」とは言い切れない空気が漂っている。
ドッキングされているわけでも、
派手な改変があるわけでもないのに、
なぜか目が離せない。
重厚な存在感と、他にはない“イケてる”雰囲気。
それが静かに滲み出てくる。
BLESSがやるMA-1は、まず“違和感”から始まる。
その違和感が、後からじわじわ正しくなっていく。


シルエットは、ボリューミーなオーバーサイズ。
とはいえ、本来の形をいじっているわけではないので、
ALPHAの大きめサイズそのままの雰囲気です。
MA-1といえば、ジャスト、もしくはワンサイズ下げて
コンパクトに着るのが“定石”というイメージがあります。
いつもならなんの躊躇もなくXLを手に取る僕でも、
MA-1となるとLがマイサイズ。
それくらい“コンパクトに着るMA-1”が染みついています。
ただ、そんなマイルールを崩してでも、
このMA-1はボリューミーに着てほしい。
ビタビタのジャストでまとめると、
この服が持つ“何か”を半分しか使えていない気がする。
大ぶりなサイズ感こそが、
溢れ出る存在感につながっている。
そして、この存在感と
ただならぬ空気の正体は、間違いなく“内側”にある。



裏側は、レッドフォックスファーを全体に施した贅沢な仕様。
フロントのジップからふわりとはみ出すファーが、
いいアクセントになっているなぁ……と思いきやのリバーシブル仕様。
ただ、これを裏返して着るかどうかは、正直あまり重要じゃない。
表で着たときにファーがどう見えるか、という点も、
この服を選ぶ上で“決定打”になるポイントではない。
大切なのは、
裏地にフォックスファーを贅沢に使っているという事実。
そして、既存のアイテムに手を施してしまうという
BLESSなりのアプローチそのものが、この服のいちばんの魅力。
最終的に惹かれるかどうかは、
一着の服としての“説得力”に素直に心が動くかどうか。




CREDIT
cantáte ”Turtle Neck L/S Shirt”




CREDIT
Atto Vannucci ”MOD 7 / SILK SETTE PIEGHE SMALL PATTERN TIE”
CLASS ”CCFA01UNI A 〈LIGHT OZ RIGID DENIM PANTS〉”
市場に溢れる、さまざまなブランドから展開される多様なMA-1という服。
そのすべての“ベース”にあると言っても過言ではない、
ALPHA社のMA-1。
古着屋で見かけても、普段は特に気に留めない存在なのに、
なぜかこの一着には、ただならぬ魅力を感じてしまう。
あえてゼロから作り上げるのではなく、
すでに完成しているものに独自の視点と遊びを差し込む。
その結果生まれるのは、
リメイクという言葉だけでは片付かない、
もっと複雑で、もっとBLESSらしい佇まい。
普遍の中に潜む“特別さ”を、この一着から感じたなら、
ぜひ手に取ってみてください。
cliché 石橋