「B品のふりをしたA級」

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こんばんは、cantáteの松島です。
「B品だと思ったら、A級の仕掛けでした。」
最初にこのパンツを見たときは、不思議な気持ちになるかもしれません。
だって……
ステッチは二重に暴走し、巻き縫いは縫い外れて、セルヴィッチの耳がチラリと覗く──
まるで、縫製ミスかと思うようなディテールの数々。
まさかB品を買わされるんじゃ……?
でも、よくよく見てください。
それらすべてが、実は“わざと”なんです。
100本のうち1本だけがこの顔ならB品。
でも、100本中100本がこの顔だったら?
それはもう、A品と呼ぶしかない。
そんな、ちょっと馬鹿げたシリーズです。
この《WW II Work Trousers》は、10オンスのライトオンスデニムを使ったペインターパンツ。
しかし、ただの軽やかなデニムパンツではありません。
わざわざラッパ(巻き縫い用のアタッチメント)を外して縫うという、職人泣かせの仕様によって、通常ではありえない見た目を生み出しています。
「正しく美しい」ではなく、「ズレているから、格好が良い」。
そんな仕上がりを目指しました。
ワークの普遍性をベースにしながら、
そこにあえて“ひねくれた美学”を差し込む。
このパンツに込めた意義でした。
ディテールも、もちろん手抜きなし。
TALON製のベル型ジッパーを採用し、ファスナーテープはコットン。
留め具はコの字というヴィンテージ仕様。
しかもファスナーテープを折って叩きつけるという、原始的な取り付け方法を採っています。
持ち出しと見返しの下側は切りっぱなし。これもニクイ仕様です。
コインポケットは切りっぱなし。
使わなくてもいいので、ときどきこのポケット口を伸ばして穿いてみてください。
そのほうが雰囲気が出ます。
裏側の見えないLポケットには耳を使用。
ズドンと、ドカンのように落ちるストレートシルエットに、ロールアップすれば耳が右足のみチラリと覗く──(私物なので裾上げしています!)
そのチラ見せひとつとっても、実は綿密な計算の上に成り立っています。
これがもし、100枚のうちのたった1枚だったなら、
「すみません、これはB品です」と処理されていたかもしれません。
でも、全員が同じように“ズレて”いたなら?
それはもう、*「B品」ではなく「仕様」*です。
100枚中に1枚だけなら“エラー”。
でも、100枚すべてがそうなら、それは“ルール”。
そんな逆転の発想から、生まれたのがこのパンツです。
いまや、どこまでも整い、どこまでも美しいプロダクトがあふれる時代。
完成度の高いアイテムに、どこか退屈を感じ始めていませんか?
《WW II Work Trousers》は、そんな予定調和を壊してくれる一本です。
意図的に生まれたB品。
そこにあるのは、完成された美しさではなく、むしろ“未完成の魅力”。
この感覚がピンときた方には、きっと、たまらない1本になるはずです。
ふつうのデニムじゃ物足りない人へ。
cantateが提案する、“ズラし”の美学を、ぜひ体験してみてください。
cantáte 松島 紳