「シャツなんて、どれも同じ?」

“こうあってほしい”を叶えたUTILITY JACKET
Cassidy Red / Sundance Gold ― 最後のRios of Mercedes
どの型にする?どのサイズにする?徹底比較。
美しく整えること、粗を引き受けること。
こんばんは。cantáte 松島です。
シャツなんて、どれも同じ──そう思っていませんか?
でも、襟がねじれずに収まるかどうか。
ストライプの縞が襟先できちんと揃うかどうか。
それは、ほんの数ミリの裁断や縫製の精度で決まります。
いいシャツを作る条件は、表からはなかなか見えません。
むしろ目立たない裏側や縫い代、針目の細かさにこそ表れる。
襟のロール、袖の収まり、縫い目の美しさ──。
すべては「見えない部分」をどれだけ大切にしているかで決まるのです。
今日は、cantáteのシャツづくりで大切にしている“積み重ね”について少し掘り下げてみます。
シャツが美しく見えるのには、必ず理由があります。
・まっすぐ裁断されていること
生地を真っ直ぐに裁断できていれば、パターン通りに縫ったとき襟はねじれず、ストライプも襟先まできれいに通る。
当たり前のようでいて、多くのシャツでできていないことです。
・フラシ芯の存在
襟やカフスには「フラシ芯」を使っています。
よくある接着芯は糊で貼りつけるため表情が硬くなり、洗濯を重ねるうちに剥がれてしまうこともある。
フラシ芯はスレキのような布を浮かせて仕込む“独立構造”。
だから動きに合わせて自然にしなり、着込むほど身体に馴染んでいく。
襟がきれいにロールして、やわらかい表情を保つのはこの仕立てのおかげ。
何度洗っても襟やカフスがシワなく収まるのは、フラシ芯ならではの強みです。
・アームホールの折り伏せ縫い
アームホールの縫い合わせは、縫い代を突き合わせて折り伏せ縫いに。
通常の折り伏せと違い、内径と外径の差がないため腕の上げ下げがとてもスムーズ。
縫い代もすっきりと収まり、肌に触れてもごろつかない。
さらに強度が増し、長く着ても型崩れしにくい。
見えない部分だからこそ、着心地の差が出るのです。
・針数の細かさ
縫い目のピッチは細かく設定。
ステッチが美しく揃い、品のある表情に。
一見して分かりにくいけれど、雰囲気を左右する大事な要素です。
・コバステッチの精緻さ
カフスや襟付けのステッチは、端ぎりぎりの“コバ”に落としています。
ほんの数ミリの攻防ですが、ここが甘いと寸法が狂い、カフスの収まりも悪くなり、全体が野暮った印象に。
縫製者の腕前が如実に現れ、シャツの「顔つき」を決める重要なディテールです。
・貝ボタンと手付けの仕立て
ボタンはすべて厚みのある本貝ボタン。
安価な薄い貝ではなく、しっかりとした厚みのあるものを選んでいるので、光沢や存在感がまったく違います。
さらに、一つひとつを職人が手で縫い付け。
ミシンではなく手付けにすることで根巻きがしっかりとかかり、ボタンと生地の間に適度な“遊び”が生まれる。
この余白があるからこそ、ボタンの留め外しがスムーズで、糸も切れにくい。
見た目には小さな違いですが、扱いやすさと耐久性に直結する、大事な積み重ねのひとつです。
・製品洗いについて
cantáteの「洗える」商品は、すべて製品洗いをかけています。
だからデニムに限らず、シャツも縮みを気にせず家庭で洗濯できます。
実はこの製品洗い、やっているようでやっていないブランドが多い。
手間もコストもかかるので、省略されがちなんです。
でも、買ったその日から安心して袖を通せること。
洗いを重ねてもサイズや表情が安定していること。
その安心感こそが、日常着として一番大事だと考えています。
ここまでの積み重ねがつくる“雰囲気”
ここまで読んでくださったあなたは、もう「いいシャツの条件」が見えてきたはずです。
雰囲気の良さは偶然じゃない。
細部の積み重ねがあるからこそ、自然とそう見える。
cantáteのシャツは、その小さな積み重ねの連続でできています。
次に袖を通すときは、襟のロールやカフスの収まり、縫い目の美しさを確かめてみてください。
きっと「なんとなく良い」の理由が見えてくるはずです。
生地が語るシャツの表情
シャツの「作り」が土台にあるとして、もうひとつ大切なのが生地そのもの。
cantáteでは今季、大きく分けて二種類のネルシャツをご用意しました。
cantáte
Color : GREEN BASE / BLUE BASE / SAX BASE / PINK BASE
Size : 44 / 46 / 48
一見するとただのチェックネル。
でも触れた瞬間に違いがわかるはずです。
経糸と緯糸を甘く撚り、甘く織り上げたフランネル。
そこに裏起毛をかけ、糸の間に空気を含ませることで、ふっくらとした柔らかさと軽さを実現。
まるで毛布にくるまれるような、包み込む着心地です。
厚手で重いわけではなく、柔らかいのに頼りがいがある。
秋口から春先まで長く使える「ネルシャツの理想形」。
胸ポケットは斜めに配して、ほんの少しの遊び心を。
カラーは〈BLUE BASE〉と〈PINK BASE〉。
cantáte
Color : BLACK BASE / MILK BASE
Size : 44 / 46 / 48
こちらは、一見クラシックで無骨なワークシャツ。
でも糸にわずかに“ネップ”を混ぜることで、表情に自然な奥行きが生まれています。
ネル特有の柔らかさに、ほんの少しの個性。
洗うほどに風合いが増し、自分だけの一枚に育っていく感覚を楽しめます。
胸ポケットにはフラップ、前立てにはスクエアボタン。
無骨さと上品さのちょうど真ん中を狙ったディテール。
カラーは〈BLACK BASE〉と〈MILK BASE〉。
落ち着きがありつつ、よく見ると個性的。
まさに「ちょうどいい個性」を纏ったネルシャツです。
Rough Flannel Shirt (183cm Size: 48)
Brushed Nep Check Shirt (183cm Size: 48)
着用してわかる“違い”
ここまで「作り」と「生地」の話をしてきましたが、実際に袖を通したときこそ違いがわかります。
襟は自然にロールして顔まわりをきれいに見せ、
カフスは浮かずに手首に沿ってシルエットを整える。
ただ羽織るだけで“ちゃんとして見える”のは、細部の積み重ねがあるから。
Rough Flannel Shirt はシンプルにデニムと合わせても雰囲気が出る。
Brushed Nep Check Shirt はジャケットの下に忍ばせても存在感を失わない。
「ネルシャツなのに格好が良い」と思えるのは、ディテールの裏付けがあるからこそです。
「シャツなんて、どれも同じ。」
そう思っていた人ほど、きっと違いに気づくはずです。
だって、かつての松島少年も、まさにそうでした。
でも、一度“違い”を知ってしまったら、もう戻れない。
目が肥えるというのは、嬉しいようで、少し厄介なことなんです。
cantáte 松島 紳