”だってその方が面白いじゃん。”
こんにちは。
clichéの木下です。
寒くなるのを待っていた僕は、超天邪鬼。
8月。
ウールのシャツジャケットを着るために、
無理やりインナーをタンクトップにして調節していました。
9月。
夜涼しくなってきたのを良いことに、
薄いものなら重ねても大丈夫という脳が働き、薄いもので厚着。
10月。
ようやくセーターを着られる季節になったので、
上物を着ない日はニット1枚で過ごす。
季節の抜け穴を見つけては、
買った服をどんどん下ろしていってるというわけ。
なにしろ、ありすぎて逆に着る服を迷ってしまうくらいなので...
今年はマジで買いすぎた。汗
代々木公園が目の前なので、ランニングマンは半袖。
日中は外人も日本人も半袖が多いです。
確かに日中は暑い日もあるので、
ジャケットを着るわけには、、、となる人もいる。
わかりますよ。でも、もったいない。
最低限カバンに羽織を入れ、夜寒くなれば召喚。
この時期の境目は、荷物が増えるのが玉に瑕だと思うので、
1日を通して心地良く過ごしていただけるセーターを紹介させてください。
去年のコットンアラシャンカシミヤを使用した、
グランジセーターが記憶に新しいですが、今回は冬版です。
別注でお作りした。"カシミヤ100%"のグランジセーター。
cantate
"Pure Cashmere Grunge Sweater"
¥165,000 (TAX IN)
インラインでカシミヤ100%のセーターがある。
それだけでもアガりましたが、
『ダメージ入れるから』
という、極上カシミヤに穴を開ける行為で生まれた1着は、
cliché Exclusive商品になります。
ダメージにするなんて、、、と思いがちですが、
何をするにも妥協を許さないcantateらしい、一歩先を行くセーター。
そりゃあ、グッと来てしまいます。
ダメージという特別感に加え、何しろ肌触りがえぐい。
以前リリースしたベビーカシミヤのGranny Sweaterを覚えていますでしょうか。
ベビカシ100%使用し、今まで感じことのない、ふわふわで柔らかい触り心地でした。
対して今回の糸を例えるなら、ベビーカシミヤの大人。つまりアダルト。
ベビーだのアダルトだの、難しいですよね、、
そもそもカシミヤってなんだよって聞かれて、
パッと答えることも難しいかもしれません。
ウールとどう違うの?いいウールってこと?
というわけで、カシミヤってなんぞや?おさらいから始めます。
まずウールは毛。
僕ら人間でいう髪の毛やヒゲなど体毛のことを指し、
僕らと同じように、バリカンでヴーンと刈り上げている毛です。
カシミヤ山羊は見えている毛は硬くいわゆるカシミヤの質感ではありません。
梳きブラシで何度も何度も撫でながらとっていくもの。
これを僕たちに例えると産毛。
ブラシについたモサモサとした毛のことを指します。
ウールに比べて繊細で、より細い。
それらモンゴルで取れたカシミヤは、
次に洗う作業が入りますが、そこまでは中国の仕事。
その後輸出されて日本で管理されていくのですが、
良いカシミヤを扱う世界のメーカーさんは、大きく分けて2つしかないありません。
もちろん他にも沢山ありますが、"cantateの製品にするなら"、2社しかない。
まず金額も天と地ほど違うので、
高ければ高いほど良いのは当たり前で、原毛の品質に大きな差が出ます。
その後、色を染めたりして管理することになりますが、
同じ原毛だとしても、
ここからの管理によって、グングン差が開いていくんだそうです。
単に染めだとは言っても、高温でパパッと染めるのか、
低温でじっくりじっくり染めていくのか、
それだけで繊維にかかる負荷も全然違ってくる。
今回使用しているカシミヤは、東洋紡糸工業というカシミヤの圧倒的なキング。
染め工程は、もちろん後者。
低温染色技術を始めとし、
科学的な柔軟剤なども一切使用していません。
カシミヤを損傷させることなく、染色とありえないほどの均一な紡績。
どこを切り取っても世界一でしょう。
お腹が空いたから、すぐ食べたいからと言って、
効率を意識して強火で一気に熱した料理がいいのか。
ゆっくりゆっくり時間をかけて火を通した料理、
様々な調味料で微調整をおこなって、キメキメの味に近づけたものがいいのか。
....そんなの、聞くまでもなく決まってる。
次に、カシミヤの肌触りについてですが、
理由の一つとして、繊維の細さがあります。
加えて、スケールの突起がまばらで小さいこと。
スケールとは毛の表面にあるウロコのようなもののことで、
僕らの髪の毛にもある、水を弾いたりしている役割も担うもの。
これが大きくなると皮膚への負担も大きくなるので、
小さければ小さいほど良く、アレルギー体質などもフルシカトできる。
最後に油分。
繊維の表面を覆っているので、滑らかかつ、
独特の柔らかい風合いを生み出しているというわけです。
良いカシミヤは、本当にメリットだらけ。
さて、本題の今時期からの過ごし易さについてですが、
カシミヤは保温性、保湿性に優れているということをお話しします。
キーワードは、空気、熱伝導率。
前述にもあるように、カシミヤはモヘヤ、ウールなどに比べても、
繊維が非常に細いという特徴を持っています。
また、ウールに比べて数は少ないですが、
繊維一本一本にクリンプと呼ばれる縮れがあるので、
そのクリンプが絡み合うことで出来た風合いは、
熱伝導率の低い空気を多く含むことになるんだと言います。
そうして作られたニットは外気を遮断し、放熱を抑える。
それでいて柔らかいから軽く感じる。
カシミヤの保温と風合いが特別なのはそういうカラクリでした。
(もともと軽いスッカスカなセーター。オメーだけはダメだ。)
先程ご紹介したスケールもここでさらに役割を果たし、
スケールが開閉して空気中の水分を取り込んだり吐き出したりすることによって、
快適な温度に調節してくれるとも言われています。
天然繊維100%、そして良いカシミヤだからこその魅力。
だからこそ今時期に着ても暑くありませんよ。
なんなら丁度良く、Tシャツに着るくらいがベストだと思います。
一度触れば病みつきになる。
この魅力を知ってしまえば、離れられないと思います。
23SSに展開していた"Assemblage Grunge"シリーズの糸を変えたもので、
形は同じく、ややルーズなワンサイズ展開。
袖口や裾のテンションはなく、リラックスした雰囲気と、
レイヤードしても、もたつくことのないデザインになっています。
ダメージのデザインは、
設定されたダメージの穴を想定して、イミテーションとして穴が編まれるため、
引っ掛けてもよほどのことがない限りは広がることもない、もはや模様。
(松島さんはよく穴に指を入れて遊んでいる、、、)
インナーに色ものを仕込んでチラ見せしても可愛いし、
通気性の面でも、暑苦しくなり辛いと言えます。
カラーはGRAYのみですが、濃いCHARCOAL GRAYと薄いLIGHT GRAY。
杢グレーのスウェットのような使い方ができるので、
みなさん慣れ親しんだカラーかと。
バーガンディーやベージュ、
ブラウンを合わせるとモダンでかっこいいだろうなあ。。
CREDIT
cantate "British Leather Jacket" ¥660,000 (TAX IN)
cantate "Fine Corduroy Trousers" ¥55,000 (TAX IN)
先日入荷したレザージャケットとのスタイリングですが、
この明るいグレーのニットには中々出会えないので、
スタイリングのイメージが浮かんで困ってしまいます。
先程まで書いていたカシミヤの良いところに付け加えますが、
良い原毛と負荷をかけない染色方法は、色味まで美しい。
CREDIT
cantate "British Leather Jacket" ¥660,000 (TAX IN)
cantate "The Shirt" ¥48,400 (TAX IN)
cliché "EX WIDE TROUSERS" ¥30,800 (TAX IN)
レザーばかり合わせてしまう。
袖、裾はほつれているようなデザインにもなっているので、
アウターの下から覗かせてあげると、いつものアウターもまた、
違った見え方になってくれるのではないでしょうか。
CREDIT
stein "OVERSIZED FLIGHT JACKET" ¥101,200 (TAX IN)
RIER "LEATHER NECKLACE" ¥80,300 (TAX IN)
10eyevan "NO.3 III BR" ¥80,300 (TAX IN)
ブラックは着ないという方も、チャコールなら話は別。
同じような使い方ができる反面、スタイリングは重くなりすぎず、
カーキやベージュ、アースカラーとの馴染みもいい。
ホコリや繊維の付着も目立たず気にしなくて良いのも、個人的にポイントが高い。
以前のセーターを2色とも着ている松島さんが、
とんでもなく気に入ってしまった為に、発売することになった今回のセーター。
結構早い段階から着始め、長いシーズン着られることもあって、
ダメージのデザインに魅力を感じているんだと言います。
個人的に僕もダメージなどのデザインは大好物なので見惚れていますが、
ここまでカシミヤについて沢山書いてきたので、
良いものなのであれば、ダメージが無ければいいのに、、
なんて声もあるかもしれません。。
でもそこに、
cantateが伝えたいメッセージが、隠されているのではないかと思いました。
カシミヤを世に送り出す際、"証明書"なるものが必要になってきます。
証明書を偽装したり、他の獣毛が含まれている等、
カシミヤ100%と比較した時の"粗悪品"が世の中に多く出回っているそうです。
昔に混率を偽造して問題になったニュースがあったと思いますが、
こうも簡単にブランドが作れる世の中なので、
おそらくまだそういった悪いことを考える人も後を絶たないでしょうし、、
おそらく松島さんは、
今までそういったブランドや洋服を多く見てきたのだろうと思います。
妥協せず、何事も、本気で。
デザインが入っているから、間口が狭いからといって、
品質を下げることは絶対にしない正直さ。
一見無駄に思えるほどの品質へのこだわり。そして作っている人、関わってくれている人たちへの敬意があります。
この方が絶対に面白いし、やばい。
ギャルみたいな発言ですが、
誰もしない、もはや誰も出来ないような理想を当たり前のように実現する。
そもそも何でダメージにしようと思ったんですか?って聞いたら、
”だってその方が面白いじゃん。”って返ってくると思います。
絶対そうだ。
強気だなぁ。
ここまで真摯で芯の通ったブランドには、そうそう出会えないと思います。
デザイナー松島 ”紳"だけに。
ここがこうだったらいいのにな、と絵空事を呟いていると、
平気で実現してくるからいつも、cantateの洋服に目が奪われる。
人生本気で楽しんだもん勝ち。
そんなメッセージが込められているセーターだと思います。
cliché 木下