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フォレスティエールという小さな風景

フォレスティエールという小さな風景

形が語ること。

革が、服になる瞬間。

”理由”と”直感”。

「おばあちゃんの寝具から生まれた服」

 

こんばんは。cantáte 松島です。


服をつくっていて、ときどき“言葉が後からついてくる瞬間”があります。

考えて生み出したわけではなく、目の前の素材やシルエットに、

ふと、名前が宿るようなあの感覚。


フォレスティエール(Forestière)という名を持つこのジャケットも、まさにその一着でした。

<cantáte>

”Corduroy Forestiere Jacket”

COL : NAVY, MAORN

SIZE : 44, 46, 48

¥352,000- TAX IN


<cantáte>

”Wool Flannel Forestiere Jacket”

COL : GRAY, NAVY

SIZE : 44, 46, 48

¥385,000- TAX IN

 

パリの老舗 ARNY’S が残した名作。

ジェンダーを超えて愛され、ワークでもドレスでもない独特の立ち位置。

その空気をいま、日本で、いまの感覚で編み直したらどうなるのか。


答えは意外なほど静かで、深いものでした。


 

作りの話——“ゆるさ”の中にある構造


フォレスティエールの特徴は、大きくふたつあります。


ひとつは、ゆったりした身頃と太い袖。

もうひとつは、どこか詩的な空気をまとうこと。


このどちらも、説明してしまうととてもシンプルです。

けれど実物を羽織ってみると、その「ただのゆるさ」ではないことがわかる。


肩の位置がほんの少し後ろに流れている。

袖にたっぷり入った分量は、腕を下ろしても前に落ちず、

自然と体の線に沿う。

パターンの線は少なく、装飾もないのに、

まとった瞬間の空気がやけに豊か。


これは、cantáteでもずっと大事にしてきた部分で、

“デザインしていないように見えるデザイン”です。


見せ場は多くない。

けれど、見えない部分がきちんと仕事をしている。


その象徴のひとつが、裏地の組み合わせでした。

見えないところに、3種類の裏地を使う理由


フォレスティエールは、表地だけで完結する服ではありません。

むしろ、裏側にこそ“着心地の質”が宿る。


このジャケットでは、目的に合わせて3種類を使い分けました。

上身頃には、コットンレーヨンのすべりのいい裏地。

肩から背中にかけての動きを妨げず、軽く羽織ったときの気配まで静かになる。

下身頃と袖口には、丈夫なコットンフランネル。

汗を吸い、湿度を程よく逃がし、肌に触れた瞬間にあたたかい。

着込むほどに、ふわりとした起毛が身体の動きに馴染んでいく。

袖裏には、コットンと生糸の交織。

ウールよりも強く、シルクほど繊細すぎない。

袖を通すたびに感じるあの“するりと落ちる”気持ちよさは、ここから生まれている。


どれも派手ではない。

けれど、この3つを正しく選び、正しい場所に配することで、

フォレスティエールは“ただ空気をまとう服”へと変わる。

 

生地①:コーデュロイという静かな主張


今回のフォレスティエールは、まずはコーデュロイから。


corduroy とひとことで言っても、

甘いだけの生地では終わらせたくなかった。


cantáteのコーデュロイは、

一般的な綿糸ではなく、密度を限界まで高め、丁寧に毛を刈った特別なもの。

起毛したスエードのような手触り、深い光沢。

厚みがあるのに、しなやか。


触れただけで、「ああ、これは普通じゃない」とすぐにわかる。

柔らかさと品の両立は、コーデュロイでは意外と難しい。

袖や襟のパイピングには、あえてラフアウト(裏使い)したスウェードのシープスキン。

少しの毛羽立ちや荒さが、コーデュロイの上品さとぶつかりあい、

ひとつの服として“調和”へ向かっていく。


完璧ではない。

けれど、そのわずかな“揺らぎ”が、服を豊かにしてくれる。

 

 

生地②:ウールフランネルという静けさの塊


もうひとつのフォレスティエールは、

Super120’s の特別なウールツイルを用いたフランネル。


この生地、織り上がってから 整理加工だけで2ヶ月以上 かかります。

縮絨と剪毛(せんもう)を丁寧に施し、ゆっくりと空気を含ませることで、

膨らみのある質感と、光の加減で表情が変わる深い陰影 が生まれる。


柔らかいのに、どこか意志がある。

クラシックでも、モードでもない、

“ただ上質である”という存在感。


襟やポケットにはエントレフィーノスウェードをあしらい、

その薄さと滑らかさが、フランネルに奥行きを与えます。


どちらのフォレスティエールも、

生地そのものが“語りすぎない”のが良いところで、

着る人の生活に自然と馴染んでいく。

 


フォレスティエールの本質——空気をまとう服


このジャケットは、決して派手ではありません。


けれど、肩に乗せた瞬間に空気が変わる。

不思議なほど軽く、

なのに“自分の輪郭がくっきりする”ような感覚がある。


昔のフランスの森を抜けてきたような、湿り気のある静けさ。

そこに日本の街の空気が重なってくる。


流行の香りはしない。

かといって、古着の再現でもない。

“いまの感覚”でフレンチワークを編み直す。

そういう服です。



CREDIT

cantáte ”Denim Flare Trousers”

 

CREDIT

cantáte ”Fluffy Parka”

cantáte ”Denim 1955 Trousers”

EYEVAN7285 ”358”

 

スタイリング——詩でも、仕事でも、日常でも


フォレスティエールの面白さは、

“着る人の生活によって表情が変わる”こと。


デニムに合わせれば、肩の力が抜けた都会のワークウェア。

スラックスに合わせれば、知性が滲む。

スウェットの上に羽織っても、妙に馴染む。


袖の太さ、身頃のゆるさ。

どれも“ラフ”ではあるけれど、

その奥に確かな設計があるからこそ、着方を選ばない。


まるで、生活の余白をそのまま服にしたようなバランス。

 

CREDIT

cantáte ”Rough Flannel Shirt”

cantáte ”Denim Flare Trousers”

 

CREDIT

cantáte ”EX Wool Deep Skipper L/S Shirt”

cliché ”EX WIDE TROUSERS”

EYEVAN7285 ”358”

 

終わりに——静かに、強く残るもの


フォレスティエールを作りながら、

ずっと頭の中にあった言葉があります。


「見えない構造に、誠実さを仕込む」


誰にも気づかれないかもしれない部分。

でも、そこを手を抜いたら、何かが一気に軽くなる。


服づくりは派手ではないし、褒められることも少ない。

けれど、時間が経つほど“ちゃんと作った服”と“作っていない服”の差は大きくなる。


このフォレスティエールは、

そんな“静かな誠実さ”を象徴する一着だと思っています。


森の空気をまとうように、

ただ羽織るだけで生活が少しだけ豊かになる。

そういう服であってほしい。

 

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cantáte 松島

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