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正直なものは、時間に勝てる。

正直なものは、時間に勝てる。

同じ服なのに、季節で違って見える話。

冬の服は、軽さじゃなく “説得力” で選ぶ。

贈る前の時間。

普遍に、ひとつの違和感を。

 

こんばんは。cantáte 松島です。


服は、新品がいちばんきれい。

そう思っていたころが、僕にもありました。

皺ひとつない袖、まだ息をしていないデニムの表面。

鏡の前で少し背伸びして、どこか落ち着かない。

それは服と距離が、まだぎこちないからです。


でも、時間が経つにつれて気づくようになりました。

新品は完成形じゃない。

むしろ、そこから始まる。


今日は、その「始まってしまった服たち」の話です。

売り物じゃない、私物を混ぜつつ。

今日はもう、売るとか売らないとかは考えてません。好きに書きます。

そのくらいの距離感のほうが、服の話は素直になる。

 

私物については、お店でご紹介できるものではないので、
ご質問にはお答えできません。
すみません。ほんの気持ちとして受け取っていただけたら。


 

まずは、変化が一番わかりやすい三つから。

RED WING 2268 PT91

僕はバイクに乗らない。チャリにも乗らない。

だから本来の使い方ではないけれど、それでも茶芯はしっかり顔を出す。

重くて、頑固で、そしてたまに飽きる。

でも気づいたらまた履きたくなる。

2268は人生で三足目。

飽きても戻ってくる。

それがレッドウイングという靴の正直さだと思う。

 

Fluffy Series

何度袖を通しても、膨らみが萎まず、形が崩れない。

ただふわふわしているだけじゃない。

肩の丸みが増え、肘がほんの少しだけ前に出てくる。

たくさん着てシルエットが崩れても、洗えばまた元通り。


着て過ごした冬の温度が、そのまま生地に染み込んでいくようで、

洗うたびに少しずつ、僕の体に寄り添ってくる。


「スウェットってどこでも一緒でしょ?」

そう思っていた人ほどハマると思う。

なんなら、このスウェットに出会うまで僕は一度も選んだことがなかった。

だって、どこか“だらしない”感じがして、好きになれなかったから。

 

Denim Flare Trousers

12.5ozの糊付けは、最初は頑固者。

だけど一週間も経つと、身体に沿ってくれる。

ユニオンスペシャルの巻き縫い、裾のチェーンステッチ、本縫いのステッチの沈み方。

全部が、時間が経つほど露わになる。

皺ではなく、余白が増える。

育っていくというのは、こういうことなんだと毎朝思う。


触れた回数だけ色褪せるけど、表情は濃くなる。

僕と服との距離が、一番近い領域にある。

一度糊付けをした人は、また糊をつけたくなる。

だってあの独特なドライな質感に、やられてしまうから。




ここからは、見えない部分がゆっくり変わっていくものたち。

Rios of Mercedes

なんでこんなに艶が出るんだろうと、今でも時々思う。

油分が抜けるのではなく、圧が入って密度が上がっていくような艶。

つま先は僕の歩き方を知っていて、履き口は僕の足の形を諦めない。

職人の吊り込みは、経年によって説得力が増していく。

 

Ribbon Belt

毎日使っているのに、主張しない。

ズボンを留めるという役目以上に、

いつの間にか“生活の動き”に寄り添ってくれる道具。


締めたときのわずかな引っかかりや、歩いたときにほんの少しだけついてくるしなり。

そういう細かいところが、自分の癖を覚えるみたいに馴染んでいく。


気にしていないようで、実は一番信頼している。

外したときにだけ、その静かな働きぶりに気づく。

Ribbon Belt って、そういう距離感のアイテムだと思っています。

 

WW2 T-Back Jacket

背中心の切り替えは、装飾じゃない。

当時の大きいサイズには、生地幅に身頃が入りきらず、

どうしても真ん中で剝がなければならなかった──

そんな“制約”から生まれたディテールです。


けれど、その偶然のような理屈が、

いまの僕たちの身体のラインを支えてくれる構造になっている。

肩が落ちきらず、前を開けても形が崩れない。

歴史が生んだ合理が、いまの生活に寄り添ってくれる。


袖だけは、いつもパリッとアイロンをかける。

そこに走るクリースラインが、密かにお気に入り。


長く着ていくと、支える服たちには人格みたいなものが出てくる。

T-Back もきっと、そのひとつ。




最後に、時間の深さがそのまま魅力になるものたち。

Mouton Vest

毛並みの流れが、少しずつ重力に従っていく。

最初は立ち上がっていた毛が、着る時間とともに落ち着きを帯びて、

肩の丸みも一年ごとにやわらかく変わっていく。

その変化の速度が、なんだかちょうどいい。


動きに合わせて毛並みが揺れて、光の向きで色の濃淡が変わる。

毎回袖を通すたびに違う表情を見せる。

「育つ」よりもっと静かで、関係性が深まるような変化。

 

Silk Linen Forestiere Jacket

今日紹介する中で、いちばん最初から距離がない。

袖を通したときの素直さ。

でも、そこで終わらない。

馴染むことがゴールではなく、

着ていくほど静かに深まっていくジャケット。


襟裏とエルボーのシープスキンは、

この服の中でいちばん正直に経年を返す場所。

触れるたびに落ち着いた艶が増す。


“削れていくことで、美しくなるものがある。”

ブラックペイントの Leica を初めて見たときも、同じことを思った。

減っていくのではなく、深まっていく。

経年の本質は、きっとそこにある。

 

Le Corbusier Vest

前身頃の余白は、日数に比例してやわらかくなる。

最初は理性的でも、季節が巡るころには感情みたいな表情になる。


極上のカーフだけど、どんなレザーも最初だけ色が浮く。

でも一週間もすれば落ち着いて、しっとり馴染む。

ぼくは面倒で、シャワーでびちゃびちゃにしたり、

おしぼりで一気に馴染ませたりしてしまう。

それくらいタフで、誠実な素材だ。

 

Hermès 小銭入れと昔作った18Kのマネークリップ

HAAS Barénia にエンボスされたレザー。

手の脂で育つ艶。

気づけば“自分の基準”を支えている道具。

 

10eyevan

どれだけ丁寧に仕上げられた金属でも、

汗と皮脂に触れ続ければ、必ず表情が変わる。


エンドチップの Silver 925

最初の明るい銀色は、空気中の硫黄や湿度に反応して、

少しずつ深いトーンへ沈んでいく。


18K のバランサー。

ほんのり赤みが増して、光の当たり方が柔らかくなる。

磨いた瞬間だけ輝きは戻るけれど、

またすぐに生活の色へ近づいていく。


フレームに施された メッキ も同じ。

触れたところから微細な酸化が進み、

使う指の位置が、そのまま跡になる。


メガネは、顔と時間の境目にある。

毎日かけているうちに、

新品では出せない “自分の金属色” が育つ。


誰のものでもない、

自分の輪郭だけを覚えていく変化。

 

Gantier Causse  Unlined gloves

シープスキンとペッカリー。

当たり前だと思っていたものが、気づけば静かに遠ざかっていく。

そういう変化に向き合う年齢になったんだと、ふと思う。


“欲しいと思ったときに、まだ手が届くなら買っておいた方がいい。”

悩む理由が値段なら買え。

買う理由が値段ならやめておけ。

誠実な道具は、その判断の基準をすっと整えてくれる。

 

ROLEX GMT-Master 1675/3

これは“経年変化を楽しむ時計”というより、

僕の1675/3は、新品がまだ知らない精度まで連れていってくれる人に触れて息を吹き返した時計です。

だってもう、この時計は 55 年前のナイスミドルなんです。


vintagerollies の金坂さん。

僕の時間と、この時計が歩んできた時間を、

丁寧に、静かに、紡ぎ直してくれる。


道具には限界があるけれど、

人の仕事には限界がない。

そう思わせてくれる時計。


5桁までのROLEXで悩んでいる人がいたら、

一度金坂さんに相談してみてください。

“洗って使える時計”になります。



新品の服を着るときは、少し緊張する。

でも、袖を通し続けた服には、安心して身を任せられる。

自分の体温や癖や生活を全部わかってくれているから。


「古くなる」じゃなくて、「自分のものになる」。

それが経年変化の本当の姿。


使った日々が、その服の物語になる。

そして目が肥えるほど、厄介にもなる。

理由のない変化に気づいてしまうから。

でも、それでいい。


あの頃の松島少年にも教えてあげたい。

新品のまま飾っておくより、

思いきって汚してしまった方が、ずっといい顔になるよ。


服のことは、着ていくほどわかる。

その“わかっていく感じ”が、僕は好きなんだと思う。


ここまで読んだなら、

あなたも良い顔に育てられる人。

隣の芝が青い?

じゃあ、こっちも青くしてやればいい。

 

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cantáte 松島

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