魅惑のTバック。
こんにちは。
clichéの木下です。
世の中には、"偶然"というものが多く発生します。
行き先が同じで、偶然すれ違った。
ふと振り向いたら、偶然、あの子のスカートの中が見えた。
偶然の出来事。
偶然の産物。
何の因果関係もなく、予期せず起きたことを指します。
日常生活にある、たくさんの偶然ですが、
洋服業界にもたくさん存在しています。
主になるのは、"偶然出来上がった" でしょうか。
男なら振り向かずにはいられない "Tバック"。
夏だからと煩悩に思いを馳せているわけではなく、
ある意味、全男性が好きなワードです。
今日ご紹介するのは、Tバックのトラッカージャケット。
数十年前は全く予想されていなかったデニムジャケットの価格高騰も、
今となっては、もう手のつけられないところまで行ってしまいました。
このTに皆、翻弄されてしまうことになるんですね。
ただのT、されどT。
もし古着でミントコンディションのものが出てきたら余裕で300万超え、デッドなら1000万クラス。
待って。そもそもTバックってなに?
S506XX "E"
ファーストモデルのE(エクストラ)サイズ、
すなわち、サイズ46からのみ見られる、背面のディテール。
旧式力織機で織ったデニムは横幅が狭く、
46のビッグサイズを作るとなると、ボディのパターンが生地幅に収まらないため背中の中心をヨーク下で切り替えていたデザインです。
46以下のサイズには無く、そもそも46というサイズ自体がとんでもなく希少。
そんな苦肉の策で作られたTバックのデニムジャケットはカルト的人気を誇るようになったそうな。
オリジナルで見たことある人もほとんどいないと思います。もちろん、僕も。
復刻されても人気、Levi'sから復刻が出た時なんて、
マニアの中で激震が走ったんだろうな。
ここまで来たら古着を探そうなんて思わない、
もし仮に、手に入ったとしても高価すぎて、日常で着られるのか?
新品なら、復刻なら。
自分でエイジングを楽しめる上に、気を遣わなくていい。
あと付け足すなら、着ることで発見があり、買うことで学びになるような、
信頼のおけるブランドなら買いたいと思っていました。
cantate
"WW II T-Back Jacket"
¥66,000 (TAX IN)
かなり楽しみにしていました。
数シーズンなかったデニムジャケットですが、
今回は1stモチーフのモデルをclichéエクスクルーシブで発売します。
前述のS506XXEをデザインソースに、46のサイズ感で仕上げた0(ワンサイズ)の展開。
素材はcantateのデニム素材ではお馴染みのサンフォーキンコットン。
岡山の機屋でじっくりと時間と手間をかけてシャトルで織っています。
抜群のエイジングを肌で感じられる、ヴィンテージさながらの生地。
今ある3タイプのジーンズともセットアップで着用できるので、
秋口はこれで決まったも同然じゃない。
506の下に穿くなら当然、501ですよね?
「今1stがキテるんだよね〜」
松島さんのこの一言から始まり、ブランドとしても初となる大戦モデル1st。
やるならもちろん、Tバック一択。
サイズはワンサイズでいいかな?
売り手としてはサイズ展開が欲しいところでしたが、ある意味これも通る。
このレベルのデニムジャケット が古着市場で出てきたなら、
サイズが合わなくても売れていくくらい、レアな逸品なのだから。
90年代に日本人が買い占め、
生産国のアメリカから日本に探しに来る、逆輸入現象が起きているほどとも言われています。
クゥ〜ッこれは、買わない手はない。
なんせタイミングがしんどいんですって。。
温めていたんだろうな、と感じるのも何だかニクく、術中にハマりっぱなし。
産声を上げた40年代は、第二次世界大戦真っ只中。
時代背景がデザインに強く反映されていて、苦手な歴史を学ばずにはいられない。
ポイントは、
フロントのタックボタンが4つなこと。
ポケットのフラップがないこと。
まずボタンについてですが、関わってくるのは物資統制。
日本で言う、"金属類回収令"です。
大戦にあたり鉄砲玉や戦車を量産する必要がある為、
ありったけの鉄を集めないといけないことから、
鉄をはじめとするあらゆる金属が回収されることになります。
Searsなど、ストアブランドのカバーオールとかを見てみても、
ボタンの個数が減っていたり、月桂樹のタックボタンだったり、
簡略化されたモデルが目立ちますね。
1944年頃、デニムジャケットに異変が生じ、
普段5つのフロントボタンを、4つに減らすことになる。
とはいえ商売も続けないといけないので、ボタンを減らし、
フラップも排除したので、どうですか!これで商売続けさせてください!
というお話なんです。
続いて、1stならではのポイントですが、
デニムジャケットは主に労働で使われてきたワークウェアです。
重いものを運ぶこともあるでしょうし、2nd、3rdのように外側カフスになると、
重いものを運んだ時に外側の障害物に引っ掛けて、
ボタンが外れてしまうことを危惧していたと言われています。
こうして歴史を感じられるのも洋服の務め。
僕らが今慣れ親しんでいる洋服も、戦争が起きていなければカタチにはなっていないし、
もはやなかったらまだ文明発達せず、日本は着物を着ていたのではないかと思うくらい。
たかが衣類じゃん。
されど、、です。
僕ら販売員や作り手からしたら、この歴史を伝えることも使命だと思います。
特徴は、ショート丈。
袖口は広く、フロントにはプリーツ、
胸ポケットはやや下位置に入り、フラップもありません。
背面にはシンチバックを施し、針有り。
古着で出回っているものだと、肘ではなくカフス近くにヒゲが入っているものがあるんです。
なんだよこれ?って思っていたのですが、
福岡出張の時に松島さんと飲んでいる時の話です。
暑いながら僕は3rd、松島さんはこの1stを着て、お酒を飲んでいたのですが、
徐に、"袖を捲る"のではなく、"袖をたくし上げた"んです。
男らしいなーって思っていたら、アッ!っていうのでびっくりしてどうしたか聞いてみたら、
1stはブラウスって呼ばれてたんだよねっていう話が始まりました。
ブラウス?シャツってこと?
シャツのように着る、デニムジャケット 。
生地のオンスなどは一旦無視しますが、袖口の広さの所以もココ。
当時の人たちはグッと袖をたくし上げて着ていたんですね。
だからこそ袖の下にヒゲが出る。面白ー!
別に興味ないならいいんですが、古着は通ってきているし、
そういったウンチクは知っておきたい。
何ならそれらを知りたいからcantateを買い、歴史を勉強して着ている節すらある。
復刻とはいえ完璧にトレースしたものではありません。
でも間違いなく、当時の"香り"が強くする。
そういえばこのジャケットに関して、発売が遅れて大変申し訳ありません。
なんせ1人の職人さんが縫っているので、3日に1着という低効率なもので、、
この"敢えて"は、衿とフロントのプリーツに隠された微妙な変化を感じてもらうため。
この2枚の写真に隠された、デザイナー松島紳の遊び心をぜひ探してみてください。
温もりを感じられるので、、つづきは是非店頭にて。笑
答え合わせしながらお喋りしましょう。
デザインソースがあるわけなので、もちろんオリジナルに則ったデザインです。
大きく崩すわけにはいかない、というか崩したら意味がない。
けれども、フィルターを通したデザインにするには?
cantateの洋服はシンプルかつ上質な素材で作られたもの。
そのシンプルと感じる点はパッと見ですが、
よく見ると一番デザインされているんじゃないか?
って思うわけです。
Flare Trousersしかり、1955 Trousersしかり。
この再解釈こそ、洋服好きを魅了する秘訣なのではないでしょうか。
僕が一番好きなのは、この脇下の巻き縫いが重なる部分のディテール。
ヴィンテージのものを一度着させてもらったことがあるのですが、
この写真は重なる中心がズレているのに対して、ヴィンテージは同じ点で重なっているんです。
ということは生地がぶ厚くなる。
袖を下ろした時に、脇の下に刺さってかなり痛い。
こういった現代だからこそできる気遣いに、毎度喰らう。
超いいんです。だからcantateで買いたい。
みんなも、買おうゼ!
CREDIT
cantate "Denim 1955 Trousers" ¥42,900 (TAX IN)
10eyevan "NO.3 II BR" ¥80,300 (TAX IN)
これはもう間違いない。
501モチーフの1955デニムを合わせて、革靴、黒縁のメガネ、、
鉄板であります。
ジーンズは1年半着用して、ようやく色落ちもわかるようになってきました。
ヒゲ、ハチノスも無く、、悔しくも失敗作と言わざるを得ないですが、
ほとんど立ち仕事なこともあり、表情弱め。
代わりに今はフレアをイチから育てているので、鬱憤を晴らしてやるつもりです。
話が逸れますが、よく来てくれる方とジーンズのエイジングについて話すのが最近の楽しみ。
買ったあと、どう育てたらいいですか?洗うタイミングは?
というご質問もいただき、エイジングマンたちが集ってきているなと。
ジャケットとの濃淡の差は著しいですが、これもまた一興ですな。
CREDIT
cantate "The Shirt" ¥48,400 (TAX IN)
cantate "Fine Corduroy Trousers" ¥55,000 (TAX IN)
Rios of Mercedes "Waxy kansas" ¥275,000 (TAX IN)
秋冬をイメージして、コーデュロイパンツでスタイリング。
足元は最近買ったばかりのリオスで合わせて、ニンマリしている杉村です。
バレーボールの川合俊一にそっくり過ぎて服が入ってきませんが、、
僕もぜひともやりたい色合わせ、スタイリングです。
3rdのビッグサイズを2年間着倒していた反動でしょうか。
このフィット感と、ショート丈が非常に男らしくて気分です。
秋冬が来たら、ニットをインナーに仕込めるサイジングなので、
決してオーバーサイズとはいえず、
クラシックフィットと思ってもらえるのではないでしょうか。
少しずつ入荷しては無くなり、ようやくすべて揃ったので今週末発売。
じっくりと時間をかけて出来上がったジャケットは、
温もりと共に、未来のヴィンテージとして手元に残ることでしょう。
46以下には見られない幻のディテール "T Back"。
作ることはできてしまうかもしれないが、
旧式の織り機であることによって生まれた、偶然の産物。
そんな偶然が、今は浪漫となって目の前にあります。
手に入れられない存在が今、目の前にある。
喉から手が出るほど、、なんとしても手に入れたい。
デニムばかりを買っているのでセーブしようとしていたんですけどね。
この魅惑のTちゃんには、勝てませんでした。
漢は本当に正直だな。
※cantate "WW II T-Back Jacket"は、7/22 (土) より、オンライン/店頭にて発売します。
cliché 木下